(2006.3.1 更新)
高輪メディカルクリニック 医学博士久保明
肥満というと「標準体重まであと○kg」などと頭に浮かぶ方もいらっしゃると思います。実は体全体で300億個あるとされている脂肪細胞の数が増加するか、大きさが増すことが肥満です。
現在、肥満の診断はBMI(ボディマスインデックス)によってくだされます。
BMI=体重(kg)÷身長(m)2であらわされ、25以上であれば肥満なのです。
ちなみに165cm、65kgの場合のBMIは約24となり肥満一歩手前の状態といえます。
平成12年の厚生労働省の統計では30歳代以降、男性では30%近くが肥満であり、女性では徐々に増加して60歳代で肥満の割合は30%を越えています。この結果日本人全体では2300万人が肥満人口と推定され、身体活動の低下と脂質摂取量 の増大が2大原因と考えられています。
さらに内蔵脂肪蓄積タイプでは腹囲(ウエスト)がめやすになるということで、男性85cm、女性90cm以上は危険なタイプとされています。しかしこれらは皮下脂肪蓄積ならいくら増えても安心というわけではありません。
何故、このように脂肪の蓄積するパターンによって糖尿病などの生活習慣病になりやすさが異なるのでしょうか?
実は、脂肪細胞はエネルギーを蓄積するだけではなく、最近では様々な物質を分泌する“分泌細胞”であることが明らかになってきました。
食欲を抑える“レプチン”糖尿病などを改善する“アディポネクチン”など多種多様の物質が脂肪細胞からは分泌されています。
そして内蔵周囲に存在する脂肪細胞と皮下脂肪細胞では遺伝子のレベルから分泌のパターンが異なっているのです。
この性質の差が生活習慣病とのつながりの違いを招いていたわけです。2種類の脂肪細胞は運動効果においても違いを生じ、内蔵脂肪の方が運動によって減りやすいという性質をもっています。
最近では薬物を使用することによって脂肪細胞の大きさが変化することもわかってきました。
サイズの小さな脂肪細胞はブドウ糖や脂肪を取り込みやすく、レプチンやアディボネクチンの産生が亢進しています。
一方サイズの大きな脂肪細胞はこの反対の性質を持ち、インスリンが作用しにくい状態をつくりだして糖尿病になりやすくするのです。
薬店に行くとダイエット関連商品がズラッと並んでいますが、肥満治療薬やサプリメントの基本的メカニズムは以下の3つです。
(1)脳の食欲中枢にはたらいて食べる量をコントロールするもの。
(2)腸管において炭水化物や脂肪分の吸収を抑えるもの。
(3)体のエネルギー消費を増すもの。
市販されているダイエット関連商品を試してみようと思われる方は、その商品に含まれている成分がこの3つの作用のどれにあてはまるのかを、お店の人に確かめてから買われるのが良いでしょう。
あまり知られてはいませんが、健康保険が適用可能な肥満治療薬としてマジンドール(商品名:サノレックス)があります。
これは(1)の作用を介して摂食量 をおとす効果があります。
確かに魅力的な薬なのですが、医師の処方が必要であることと、時に口渇やフラツキなどが生ずる可能性もありますので注意して服用しましょう。
運動については、今までほとんど体を動かす機会の少なかった人の場合、1日10分間の歩行から開始します。
“20分以上運動しなければ意味がない”は昔の話で、最近では日常生活の中でいかに体を動かすか(買い物や通勤など)が重要とされています。むしろ歩くだけよりも筋肉をつける運動とストレッチングを併用することが効果 的です。(前号参照)
肥満は生活習慣病(糖尿病、高血圧など)の根幹となる体の代謝障害です。自覚症状を殆ど伴わないままに進んでしまいますから、1週間に1度位は体重(体脂肪)をチェックして水ぎわで食い止める工夫をしたいものです。